過去のお題
1.「菰野富士」

むかしむかし、西の近江の国にとてつもなく大きな男がいました。
国のどまん中に大きな穴を掘り、その土をモッコに入れて棒でかつぎ、せっせと遠い駿河の国まで運びました。
その土が積もり積もって富士の山になり、掘った大穴に水がたまって琵琶湖ができました。
あるとき大男が鈴鹿の山をヨイショと越えたひょうしにモッコの土がこぼれ、その土で菰野富士が出来たという話です。
※菰野富士は、標高369mの小さな山で、いかにも大男が土をこぼしたような小高い山です。
頂上付近は360度に渡って視界が開け、御在所岳を間近に見ることもできます。
菰野富士は菰野町で育った方にとっては、遠足で訪れたこともある思い出の場所の一つではないでしょうか。 山頂付近では桜の植樹も行われ、菰野町民に愛されている山の一つです。

2.「鹿の湯」

鈴鹿山脈の中の一つ、御在所岳(ございしょだけ)のふもとにある湯の山温泉は、 およそ1300年も昔にひらかれた温泉です。
ある時、きこりが、一頭の鹿が怪我した足を谷川の水につけているのを見つけました。
鹿は、「傷によくきく湯がわき出ています」と言い残して、しげみの中に消えていきました。
きこりは、その湯のわき出ているところに若い杉の木を三本、目印に植えて帰りましたが、何年かたって山で大怪我をしてしまい、ふと鹿が教えてくれた湯のことを思い出し、谷川に行って傷口を湯につけました。
不思議なことになかなか治らないと思っていた傷が一週間くらいですっかり良くなりました。
この傷によく効く湯の話は評判となり、遠くの方からたくさんの人びとが「鹿の湯」に 入りにくるようになったそうです。

3.「五郎兵衛地蔵」

むかし、むかし、五郎兵衛という正直な百姓がおってな。
ある時お地蔵さんの前に大きな石があって、みんな困っておった。
五郎兵衛はなんとかそれをどかし、 信心深く手をあわせたそうな。
五郎兵衛さんには大事なひとり息子があったんじゃが、 その息子が、ある夏、はやり病にかかって大患いした。
案じた五郎兵衛さんは、日頃信心していた地蔵さんに 息子の按配がよくなる様、一心不乱に願かけした。
何度も手をあわせていると、不思議な声が聞こえた。
「五郎兵衛、お前は良いことをした。 誰も見ていないのに、みなのために邪魔な石をどけた。
自分のためだけではのうて、人のためにしたことが、良いことなんじゃ」
お地蔵さんが五郎兵衛さんの行いを見ていてくれたのか、 五郎兵衛さんの願いが通じ、 息子の重い病いも薄皮がはげるように次第になおり、 元通りの達者になり、 やがて嫁をもらい、家を継いでくれた。
そこで、五郎兵衛さんはいっそう信心して、 地蔵さんのそばに、雨露をしのぐだけの小屋を建て、 ここにひとり住みついて、お地蔵さんをお守りしたそうじゃ。
それから人は、この五郎兵衛さんの名を取って このお地蔵さんを、「五郎兵衛地蔵」というようになったということじゃ。
※お地蔵さんの前には、丸い手頃の石が置いてあります。 この石のことを重軽石といいますが、ここへ詣る人は願い事があると、まずお地蔵さんにお祈りをして、この石をそっと持ち上げてみて、 願いが叶うかどうかを石の重さで占います。 願いが叶う場合は、石が軽々と上へあがるそうです。